「名前を呼んでもこっちを向かないんですけど・・・耳が聴こえていないんでしょうか?
「目が悪いのかな・・・?」
「病院で検査をしたが異常ないと言われたんだけど、、なぜ?」・・・等
保護者の方から、こういった相談をよくされることがあります。
自分の名前を呼ばれて振り向く、視線が合う、何らかの反応がある、こういった日々当たり前にできると思われる行動一つとっても、子どもたちにとっては高い認知機能を必要とし、様々な段階を経ていかなければ正しく脳の各パートの神経が発火し、表出することができません。
Labでは、専門的に感覚統合との関係や、認知の段階、視野(眼球運動等)、身体機能、神経心理等、一人一人細かく分析し、原因をできる限り明確にしながら療育を行っています。
それぞれの児に合った「絶妙のタイミング」・「閾値」で刺激を入れることにより、混乱なく脳の回路が回りやすくなります。
中核症状となる部分は一体どこにあるのか、症状の改善が直接的目的ではないのですが、正しく丁寧に追跡していくことが、周辺症状軽減・改善に繋がり、結果として子どもが楽になり生きやすくなるということが最も大切なことといえるのではないでしょうか。
<朝のオリエンテーション・導入アクトの様子>




まずはそれぞれの参加形態(たとえ問題もしくは不適応発言・行動・行為が多いとしても)を容認(「保障」という)します。
例えば、①「文字と人が発している言葉を一致できる共同注意の場を設定する」では、
目的が注意集中なのでウロウロしながらでも・抱っこされながらでも・寝転がっていても
・・・、できた!と、前成功体験と捉え、正のフィードバックを入力します。
また、②「集団の中で発言する場をクローズアップして設定する」では、
相手の発言を聴いたり、行動に注目することによる効果を目的とする際、リーダー(集団療法的意義)が正面同位でorサブが90°高位でor側方圧迫刺激などと伴に刺激提示するのか、また症状出現が消退するタイミングを見極め瞬時にアプローチするのか、など詳細な設定がそれぞれの児ごとに統一していなければなりません。
更に③「その発言に対する他児や集団としての反応を感じ、体験記憶の場にしたい」では、個人の世界ではなく、”自分も集団の一員なのだ”という集団意識(「集団帰属感」という)をもてるように。そして、集団単位の受容・賞讃体験獲得を目的に、療育者や他児の共感者が大きく解りやすく褒める(言語、ボディラングェジ・タッチングアプローチなど、複合的同時刺激利用)ことで、自己充足感や自己有能感を入力し、”なんか自分できるぞ!嬉しい!またしたい!お友達と一緒に何かするのって楽しいかも!等”を積み重ねていきます。
そうしたことが対人交流技能、コミュニケーションへのきっかけ(内的動機付け)、言語機能へ繋がるあらゆる基礎認知を脳のなかでつくり上げていくのではないでしょうか。
<通所時-朝の準備と手指巧緻性-認知課題を繋げて考える >
生活動作を通して、細かい指先の運動(微細運動)や関節各部の協調性運動を行うことを、認知へとつなげていきます。
精確な刺激が脳に伝わり回路として結ばれることで、言語面や対人面、認知、日常生活活動(ADL)動作にもつながっていきます。



<バイタルチェック時の様子>
”自分の体調や心身の状態を知る”ということは、人が生きていく中でも、とても大切なことです。
最初は体温を測るという行為に対し、どう対応して良いのか解らず、混乱し、激しく抵抗してしまう子どももいました。
感覚の問題や、先の見通しが立てられない不安、恐怖等、子どもにとっては様々な刺激を統合して処理できないことで混乱へと繋がりやすくなっていってしまうのです。
子どもを中心に、枠に囚われない(”こうするべきである!”という療育する側の思考パターンを断ち切って!!)目の前の子どもの行動にのっかりながら、適切な即時アプローチを繰り返し行っていくことで、この”体温を測る”という行為がきちんと意味のある行為・時間だと意識できるようになっていきました。(「行為-思考変容」という)
今では、体温計を見せると指先で触れて確かめたり、自ら脇に挟んでみようとするなど、自立動作へと繋げていくことができるようになってきています。


<食事の様子>
それぞれの特性に合わせ、環境による刺激量を調整しながら食事をしていましたが、少しずつ集団意識がもてるようになり、注意機能が向上してきたこと等の結果、きちんと着席し、落ち着いて食事をすることができるようになりました。
朝のアプローチから始まり降所のバスに乗るまで、細かくこだわり適切な刺激を入れてあげることで、食事の場面でもその効果が表れていると感じます。



子どもが安定した状態で生活するためには、認知・感覚の基礎から整えることがとても重要だと様々な世界的研究でいわれております。
食事の目的
食事準備から片付けまでを通して、学校生活における集団給食の練習として設定
~「落ち着いて食事ができない、座れない…」などの相談があった児の例~
〔アプローチの目的〕
・終了‐片付け(時間感覚を育てる)
・注意機能:集中維持
行動の原因となっている注意機能とは:
様々な行動・言葉を投げかけてくる他児のなかで、自分のペー スを守り続け、食事を楽しみながら、時間内に行動する。
・箸操作訓練:右手と左手の連動と固定‐操作の協調性技能
・感覚‐認知‐集中:準備~片付けによる物品操作(巧緻性動作)・運搬動作を速く、正確に行う。
〔集団療法的アプローチ〕
1.「準備の時間」と「待つ」:予測認知
2.集団内での食事を訓練的に他児と共有し、楽しみ体験獲得に繋げる:注意‐遂行機能
3.他児等の周囲の流れを意識しながら、食事終了の認知から「片付け」という食事行為完結までの 一連行動形成化への認知獲得。
上記の他それぞれの特性に合わせて設定を行なっていきます。
そして、それがADLにおける自立動作が増えていく源になっていくと考えております。