集団療法的アプローチ
~感覚-運動、認知-言語、認知-社会性 一連の連合・一致~

Program 例:「キャッチボール」

Labの先生方は、専門的技術や知識を日々スキルアップしながら施行しています。

このような多種同時アプローチをきちんと適確に行うことで、基礎認知全般、対人関係スキルやコミュニケーション能力、適応力などの力にも繋がっていきます。

実際に繰り返し「キャッチボール」を施行し、
 どのような状態の児が、どんな結果(効果)に繋がったのか、以下にご紹介致します。
 (実際のアプローチ法の1例については前回記事「集団療法Ⅰ」を参照)

<CaseⅠ>
 名前を呼ばれても反応がない、接触して声をかけても振り向かない、視線が合わない、あるとしたら自己の強い要求がある時のみクレーン現象がみられるという状態であった。

 ⇒ 名前を呼ばれると先生に注目し、返事(タッチ等)や笑顔がみられるようになった。

視線が合うようになり、指示を聴いて行動(言語理解)ができる。
また家庭での生活でも変化がみられ始め、
「名前を呼ぶと手を挙げて返事ができるようになりました!」
「ゴミをごみ箱の中に捨てられるようになりました!」
「教えてもいないのに、食器を下げたり、簡単な手伝いをしようとすることが増えました!」等、

 Labでの療育結果が、家庭場面でも繋がっていき、子どもの行動形成へと自然に応用できた(「汎化」という)。

<CaseⅡ>
 教室を走り回って落ち着かない、ロッカーや机の上など高いところに登ってばかりで着席できない、椅子に座るよう促しても全身を使って抵抗し、集団参加が困難。

 ⇒ 先生の呼びかけに反応し目標物(椅子)を意識して自発的に短時間であるが着席する。
先生に注目して姿勢を整えることができるようになった。
集団の中で安心した表情で、落ち着いた様子で過ごせるようになった。

<CaseⅢ>
 “待つ”ことができない、目に入ったら衝動的に行動してしまい止められない、どうして良いか解らず暴れる、噛む、自傷行動が激しくなっていく、混乱すればするほどエスカレートし、汗びっしょりになって大泣きし続け、切り換えることができない。

 ⇒ 自分の番がくるまで順番を待つ、先生の声掛けを聞いて動・静の区別をつけて行動化(発動・抑制)することができるようになった。
状況を判断して自分の行動を抑制したり、場面に合わせて注意転換が可能となった。 
自傷行動がほとんどみられなくなり、楽になっている。
何より笑顔が増え、苦しそうに抱っこされることがみられなくなった。

<CaseⅣ>
 対人関係が拡がらず、生活に必要な交流を求める場面でも反応がない、物を介してのやりとりや道具を使った動作ができない。何事も独り遂行になってしまっていた。

 ⇒ 「どうぞ。」「ちょうだい。」という1対1(一項関係)の交流ができるようになり、徐々に1対2(二項関係)の交流へと拡大させていくことができた。(適応力・社会性の向上)

「返事は”ハイ!”でしょ!言いなさい!」「何してるの!座りなさい!」「人の物を勝手に取っちゃダメ!」と周囲の大人が矯正して言い続けると子どもはいつもいつも失敗体験の連続で、大切な脳に傷をつけてしまいます。

 子どもの中では「そんなこと言われても、まだ解らないよ・・・そんなに僕(私)は悪い子なの?」「わざとしているわけじゃないんだよ・・・わけがわからなくなるんだよ」と、とても苦しい思いをしているかもしれません。

上記のような治療的アプローチを地道に繰り返すことで、
子どもたちは”座るってこういうことか!”、
”ここで待つと良いこと(皆から認められる・笑顔になる・ほめられる等)が起きるぞ!”、
”待つって悪くないな・・・”、
”先生(人)とやりとりをするって楽しい!”と、
実際に体験しながら学習していくことができているのではないでしょうか。
 そして何より、大切なこころ(脳)が傷つかなくて済むのですね!!

 その日、その瞬間で違う子どもたちの反応をみながら行動分析を行い、検討し、適切な行動形成ー固定化へと発展していけるようにアプローチしています。
  ※(年齢や発達段階に応じてプログラムを適応しています。)